伊勢神宮(-JINGU-)◆ 多賀宮(TAKA-NO-MIYA)
創建年
- 推定:478年(雄略天皇22年/古墳時代)以前
建築様式(造り)
- 切妻造り
- 平入
- 掘立柱
※神明造り
屋根の造り
- 茅葺き(萱葺)
鰹木の数
- 5本
千木の形
- 鋭鋒型(外削ぎ)
素材
- 檜(ヒノキ)
大きさ(正殿)
- 棟持柱の高さ(地面から棟まで):不明
- 梁間:不明
- 桁行:不明
鳥居の形式(境内)
- 神明鳥居(伊勢鳥居)
御祭神
- 豊受大御神・荒御魂
社格
- 伊勢神宮・外宮(豊受大神宮)「別宮」
項・一覧
- 1 伊勢神宮(-JINGU-)◆ 多賀宮(TAKA-NO-MIYA)
- 2 多賀宮の読み方
- 3 伊勢神宮 外宮(別宮)「多賀宮」の名前の由来
- 4 伊勢神宮・外宮での願い事は、すべて「多賀宮」のみでできる??
- 5 ところで・・伊勢神宮はなぜ個人的なお願いができないの??
- 6 えっ!伊勢神宮で荒御魂をお祀りしているお宮はもう1つある??
- 7 パワーが止まらない?!多賀宮は強力なパワースポット!!
- 8 多賀宮の御祭神についての謎
- 9 伊勢神宮 外宮(別宮)「多賀宮」のご利益
- 10 伊勢神宮 外宮(別宮)「多賀宮」の歴史
- 11 多賀宮の神事
- 12 多賀宮の社殿は他の別宮よりも大きい?!
- 13 多賀宮には鳥居がない!!「鳥居がない理由とは?」
- 14 多賀宮の場所(地図)
- 15 外宮のオススメ参拝ルート
多賀宮の読み方
この多賀宮の読み方は「たかのみや」と読みます。
「たがのみや」でも間違いとはいいきれないものはありますが、正式ではありません。
外宮4別宮における多賀宮の社格は順位は「首位」となり、これは別宮の中で最高の順位となります。
つまり、外宮の御正宮に次ぐ社格とされています。
伊勢神宮 外宮(別宮)「多賀宮」の名前の由来
多賀宮は、皇大神宮(内宮)が創立された年に、同じく創建されたと云われております。
「多賀宮」は「伊勢神宮 外宮(別宮)」に属しており、98段もの石段を登った高台にあることから、かつては「高の宮/高宮(たかのみや)」と呼ばれていました。
事実、明治時代以前の文献上には「高ノ宮」や「高宮」と記載されています。
⬆️多賀宮の石階段。寝地蔵石の前あたりから見下ろしてみたところ。
しかしいつの頃からか、個人的なお願いを聞き届けてくれて多くの願い叶えてくれるといった「縁起が良い」という由来から、「高の宮 ⇒ 多賀の宮」というように名前が付けられ、最終的に現在の「多賀宮」で着地しています。
「賀」の漢字の意味とは?
「賀」とは「先駆けて起こった良いことを喜び祝う」「喜びたたえる」などの意味がある。正月の「謹賀(きんが)」は「つつしんで喜ぶ」の意味。
つまり、「真摯に祈念することで多くの賀(喜び)が期待できる」などの言葉になります。
伊勢神宮・外宮での願い事は、すべて「多賀宮」のみでできる??
この伊勢神宮・外宮(別宮)の多賀宮には、豊受大御神の「荒御魂」がお祀りされております。
「荒御魂」とは、「荒ぶった魂」とも読み、これを人の業に言い換えると「行動的・積極的な心」もしくは「欲を持つ」とも解釈できます。
すなわち「荒御魂」とは、これは神様の行動的な性格を現し、おだやかな側面の「和魂(和御魂/にぎみたま)」に相反する存在ということになります。
ただし、勘違いしてはいけないのが荒魂(荒御魂)が「=悪」というイメージではないことです。
行動的な魂の具体例として、例えば、スサノオ神が地上から天照大御神の御座す天(高天原)へ昇った際、スサノオ神が地上に落としたことを恨んで、高天原を奪いにきたと錯覚した天照大御神は、武具を装着してこれを出迎えています。
この時の天照大御神がとった行動こそが、荒魂に該当するものだと言えます。
ちなみに「荒御魂」をお祀りしている社では、個人的なお願いをして良いと云われております。
多賀宮でお願い事をしても良い理由
実は現代においても荒魂を祀った社でお願い事をしても良い理由は明らかにされていないようですが、一説では参拝者のための計らいであると考えられています。
参拝者も人間です。日本の神宮でお願い事ができないのであれば、はたして参拝する人はいるでしょうか?
荒魂は神様の行動的な性格、つまりパワーをもった魂であると解釈することができ、パワーに押されて願い事が叶いやすいと云われています。
この道理を利用した神職の方々や御師(おし)、もしくはその関係者が、式年遷宮が永続できるように資金を得る目的で話を広めたとも考えられます。
ところで・・伊勢神宮はなぜ個人的なお願いができないの??
伊勢神宮では元来、個人的な願い事はできないとされています。
個人的なお願いができない理由は、元来、伊勢神宮には「私幣禁断」という制度があり、天皇以外の奉納(お供え物)や願い事が禁止されていたためです。
「幣」は、「幣(ぬさ)」とも読み、当時の価値では物として「紙、麻、木綿」の事を指しました。現在風に言い換えれば「紙幣(お札=賽銭)」のことを指します。
よって「私幣禁断」とは、「幣」に「私」を合わせて「個人の奉納は禁止とします」と解釈されます。
つまり、伊勢神宮では、「1年間今日まで無事で過ごして来られたことの感謝をご報告する」もしくは、「国民すべての平和を願う」といった形式が古来、踏襲されています。
えっ!伊勢神宮で荒御魂をお祀りしているお宮はもう1つある??
実は、伊勢神宮で「荒御魂」をお祀りしている多賀宮と類似したお宮として、他にも内宮の別宮「荒祭宮(あらまつりのみや)」があります。
つまり、内宮では「荒祭宮」が多賀宮に相当し、これら2つの社であれば、個人的な願いをして良いということになります。
パワーが止まらない?!多賀宮は強力なパワースポット!!
冒頭でも触れましたが、多賀宮は豊受大御神の「荒御魂」をお祀りしています。
すなわち、「荒ぶる=怒れる意思」を指し示しておりますので、怒りにも似たパワーを授かることができます。
つまり、この多賀宮で真剣にお祈りすれば、何か事を始める時には、豊受大御神の「荒御魂」による強い力(パワー)で、後押しして下さるそうです。
もう1つ多賀宮のパワースポット!「寝地蔵石」
忘れてはいけないのが多賀宮のもう1つのパワースポットとされる「寝地蔵石」の存在です。
地蔵に「寝る」という文字が付されていますが、これは地蔵が直立姿勢ではなく、本当に寝ているからです。
古来、この石を見つけて拝んだ者には吉兆が訪れるとされ、この理由はその微笑んだお顔に由来しているされます。
寝地蔵石の場所は多賀宮への石段を昇った先にある踊り場の垣根の下にあります。注意深く見ていないと通り過ぎてしまいます。(くれぐれも周りの人にブツからないようにご注意ください)
詳細については下記ページをご覧ください。
多賀宮の御祭神についての謎
この多賀宮の御祭神は上述した通り、「豊受大御神・荒御魂」になります。
しかし、神宮に古くから伝わる「大祓詞(おおはらえことば)」という古書物の記述によると、この多賀宮の神様には別の名前の神様も見えます。
その神様とは「直毘神(なおびのかみ)」と「伊吹戸主神(いぶきどぬしのかみ)」という2柱の神です。
これはつまり「豊受大御神荒御魂」と「直毘神」と「伊吹戸主神」とが御同体の神様と解釈でき、つまりは多賀宮の御祭神「豊受大御神・荒御魂」の別名であるという解釈も成り立ちます。
伊勢神宮 外宮(別宮)「多賀宮」のご利益
多賀宮の最大のご利益は、やはり「個人的なお願いができる」といったことではないでしょうか。
ただし、外宮のご利益もあります。
豊受大御神の名前の「受」には意味があり、昔は「食べ物(穀物)」のことを「ウケ」と呼んだそうです。
そして昔の日本でいう「穀物」とは「五穀」のことになります。
「五穀」とは、人が生きていく上で欠かす事のできない必須の食べ物であり、「稲(米)・麦・大豆・小豆・粟」の五穀を指し示します。
これはすなわち、豊作が訪れ、食に困まらず、暮らしも豊かになるといったご利益を得られるということでしょう。
伊勢神宮 外宮(別宮)「多賀宮」の歴史
「多賀宮」は、外宮の4別宮の中で最高位の別宮となり、最古の歴史を持つ社だと伝えられています。
よってその歴史も最古と呼べるものがり、連綿と続く悠久の時を経て現今に至る様が理解できます。
多賀宮の創建はいつ?
804年(延暦23年)に当時の伊勢神宮禰宜「五月麻呂」らが著した「止由気宮儀式帳(とゆけぐうぎしきちょう)」によれば「止由気宮大神宮荒御魂神也」の記述が残されており、さらに807年(大同2年)に編纂された「神事供奉本記(しんじぐぶほんぎ)」にも「雄略天皇二十二年」の記述が見られることから、外宮鎮座と時を同じくして創建された可能性が示唆されます。
かつて外宮には「40末社」なる「40社も末社が存在した?!」
江戸時代の外宮には、40社もの末社群の祠が宮域内に存在したと言われています。
現在の外宮の宮域を見れば分かりますが、多賀宮の周辺には土宮と風宮が寄せ集まる形で鎮座しており、それ以外の場所に40社もの末社が軒を連ねて祀られていた様子が垣間見えます。
多賀宮の神事
祭典も御正宮に準じた次のような神事が執り行われています。
- 祈年祭
- 月次祭
- 神嘗祭(かんなめさい)
- 新嘗祭(にいなめさい)
これらの諸祭には、天皇陛下から遣わされた勅使が「幣帛(へいはく)」という捧げものを奉納します。
幣帛とは?=織物(反物/布)、衣服、紙、玉、お酒などの神様に捧げるため品々のことです。
多賀宮の社殿は他の別宮よりも大きい?!
普通にお参りするだけで、まず気づく人はいないともいますが、多賀宮の社殿の規模は正宮に次ぐ大きさを誇り、他の別宮よりも一際大きいものとなります。
この上さらに、20年に一度執り行われる「式年遷宮(しきねんせんぐう)」も正宮と同じ年に斎行されます(行事が行われます)。
これらのことから多賀宮は、伊勢神宮の中でも別格の重要なお宮であることが明らかです。
多賀宮には鳥居がない!!「鳥居がない理由とは?」
階段を昇ってきて疲れのせいか、案外、気づかない人も多いのですが、この多賀宮には「鳥居」がありません。
参拝して帰宅してから写真を見て、「あれ?そう言えば・・」などと気づく人も多いと思います。
鳥居がない理由としては、御社殿こそは離れていますが、異空間において御正宮と繋がっているからだとも云われております。
その他の説では御正宮の和御魂と多賀宮の荒御魂がつながっているためとも云われます。
もう1つ鳥居がないお宮が伊勢神宮にあるぅ?!
実は、もう1つ鳥居がないお社がありますが、お分かりになりますか?
そうです。上述した「内宮の荒祭宮」です。
双方のお宮とも「荒魂」をお祀りしているお宮になりますので、これは「伊勢神宮の七不思議」の1つとも言われています。
見方を変えれば「荒魂をお祀りしたお宮だけ鳥居がない」と言う解釈も成り立ちます。
果たしてこれは偶然なのか、理由があるのか・・さてはて。
多賀宮の場所(地図)
外宮のオススメ参拝ルート
※注釈※
伊勢神宮の正しい参拝のコースは外宮⇒内宮が基本で、他には特に無いとされていますが、外宮の境内においては、『「御正宮」→「多賀宮」→「土宮」→「風宮」』と、いう参拝順序が基本とされているようです。