伊勢神宮(-JINGU-)◆ 荒祭宮(ARAMATSURI-NO-MIYA)
創建年
- 不明
- 推定:垂仁天皇26年10月(弥生時代)
建築様式(造り)
- 切妻造り
- 平入
- 掘立柱
※神明造り
屋根の造り
- 茅葺き(萱葺)
鰹木の数
- 6本
千木の形
- 内削ぎ
素材
- 檜(ヒノキ)
大きさ(正殿)
- 棟持柱の高さ(地面から棟まで):4.48m
- 梁間:6.42m
- 桁行:4.24m
鳥居の形式(境内)
- 神明鳥居(伊勢鳥居)
御祭神
- 天照坐皇大御神荒御魂
社格
- 伊勢神宮・内宮(皇大神宮)「別宮」
項・一覧
- 1 伊勢神宮(-JINGU-)◆ 荒祭宮(ARAMATSURI-NO-MIYA)
- 2 荒祭宮の読み方
- 3 荒祭宮の御祭神「天照大神荒魂」
- 4 荒祭宮の本当の御祭神は「瀬織津姫、八十禍津日神」?!
- 5 荒祭宮の歴史・由来
- 6 荒祭宮は実はとんでもないパワースポットだった??
- 7 ところで・・荒祭宮では個人的なお願い事をして良いの?
- 8 そもそも伊勢神宮でお願い事ができない理由とは?
- 9 荒祭宮の石段にある「踏まぬ石」?
- 10 荒祭宮の石段に真ん中に生えている摩訶不思議な「杉の木」
- 11 えぇっ?!荒祭宮には鳥居がない?!
- 12 足腰の弱い方は「荒祭宮・遥拝所」でお参りを!
- 13 荒祭宮の場所(地図)
- 14 伊勢神宮・内宮(境内)のおすすめの参拝ルート
荒祭宮の読み方
荒祭宮は「あらまつりのみや」と読みます。
荒祭宮の御祭神「天照大神荒魂」
荒祭宮の御祭神は「天照坐皇大御神荒御魂(あまてらしますすめおおみかみのあらみたま)」といいます。
一説では、「大祓詞(おおはらえのことば)」という古書物に登場する「瀬織津姫(せおりつひめ)」が、この「天照大神荒魂」と御同体であると云われています。
また、「八十禍津日神(やそまがつひのかみ)」という神が、上記「瀬織津姫」と同一の神様であると考えられため、「八十禍津日神」も「天照大神荒魂」と同一の神様であると云われています。
この神様は天照大神の荒ぶった魂をお祭りしており、つまりこれは、人で言うところの「行動的な性格を表現した魂」のことです。
「行動的な魂」とは、「積極的な」という意味合いにもなり、一種の「業(ごう)」であり「欲」のことでもあります。
行動的な魂の具体例として、例えば、スサノオ神が地上から天照大御神の御座す天(高天原)へ昇った際、スサノオ神が地上に落としたことを恨んで高天原を奪いにきたと錯覚した天照大御神は「武具」を装着してこれを出迎えています。
この時の天照大御神がとった行動こそが、荒魂に該当するものだと言えます。
荒祭宮の本当の御祭神は「瀬織津姫、八十禍津日神」?!
上述で、瀬織津姫や八十禍津日神の話をしましたが、上記の「倭姫命世記」を含めた神宮に古くから伝わる「神道五部書(しんとうごうぶしょ)」によると、この荒祭宮の御祭神は、「天照坐皇大御神荒御魂」ではなく、「瀬織津姫、八十禍津日神」と定めているようです。
荒祭宮の歴史・由来
荒祭宮の創建年は不明とされておりますが、伊勢神宮に伝わる古書「太神宮本記」の記述によれば、「垂仁天皇二十六年十月、御正殿と同時・・」などの記載があることから内宮の御正殿と同時に創建されたものだと考えることができます。
また、伊勢神宮では、荒祭宮を天照大御神そのものとして、次のように、御正殿とほぼ同様に崇めています。
皇室の勅使は御正宮(御正殿)と、ここ荒祭宮のみに拝謁する
荒祭宮のみが御正宮(御正殿)と、時期を並行して遷宮が執り行われる
御饌(神饌)の量や種類も、御正宮(御正殿)とほぼ同様の物が捧げられる
社殿の大きさが他の別宮と異なり、少し大きめのサイズで造られている
祈念祭、神嘗祭、新嘗祭の奉幣の義(祭典)も正宮に次いで勅使、大宮司、少宮司以下神職が参向して斎行される。
例年、5月と10月に執り行われる「神御衣祭(かんみそさい)」も、内宮の御正宮と荒祭宮のみで行われる
これらのことから、別宮でありながらも、別格の扱いを受けていることが分かります。
「廣田神社(兵庫県西宮市)」と荒祭宮との意外な結びつき
実は、天照大御神の荒御魂がお祀りされているのはここ荒祭宮だけではなく、他にもあります。
まず、身近な有名なところで言えば、遠之宮の「瀧原宮(瀧原並宮)」にて「天照大御神の和魂・荒魂」がお祀りされています。
そして、一般的にはあまり知られていませんが他にも神社があるのです。
それが「兵庫県西宮市にある廣田神社」です。
廣田神社の御祭神は「天照大御神の荒御魂」で、なんと!伊勢神宮の荒祭宮と、まったく同じ御神体をお祀りしているそうです。
そしてさらに、この廣田神社には、もう1つ以下のような、別の名前の祭神がお祀りされているのです。
その名前が「撞賢木厳之御魂天疎向津媛命(つきさかきいつのみたまあまさかるむかつひめ)」と言い、..舌が回りまふぇん!・・的な読み方の神様となります。
しかし、ここで疑問が出てくるのが、廣田神社には「天照大御神の荒御魂」しか、お祀りされていないことになっています。
あれ?なぜ2柱??・・などと疑問が湧いてしまうのですが、なんと!廣田神社では、「天照大御神の荒御魂」の事を「撞賢木厳之御魂天疎向津媛命」と呼ぶそうなんです。
さらに、廣田神社によると「撞賢木厳之御魂天疎向津媛命」とは、上述の「瀬織津姫(せおりつひめ)」のことを指し示すといわれております。
これらの証拠を示す書籍として「倭姫命世記」をはじめとした古書3冊の記述によれば「伊勢神宮・内宮の荒祭宮の主祭神は正式には”瀬織津姫”である」と記されています。
瀬織津姫と言えば、「祓社(はらえのやしろ)」の4柱の1柱であり、つまり「祓戸四柱神」1柱です。
これは出雲大社の勢溜の鳥居のスグ後ろにある「祓社」にお祀りされている1柱神となります。
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さぁ~て、いよいよ、何がなんだかよく分からなくなってきました。
ちなみに荒祭宮でも20年に一度、遷宮で御社殿が新造されているのですが、上述のような廣田神社との深い縁があることから、旧社殿が廣田神社へ授与されたようです。
荒祭宮は実はとんでもないパワースポットだった??
伊勢神宮自体が強力なパワーを帯びていますが、一説によると荒祭宮からも強力なパワーが放たれていると云われています。
その原因と所以が「天照大御神の荒ぶった魂」とされる「荒魂」です。
「荒魂(荒御魂)」とは、これは神様の行動的な性格を現し、おだやかな側面の「和魂(和御魂/にぎみたま)」とは相対する存在であるといえます。
ただし、勘違いしてはいけないのが荒魂(荒御魂)が「=悪」というイメージではないことです。
実のところ外宮にも「豊受大御神の荒魂」をお祀りした「多賀宮(たかのみや)」があり、同様にこの多賀宮でも強力なパワーが解き放たれていると云われております。
その理由はやはり、神様の行動的な性格を現す、荒ぶった魂をお祀りしているからに他なりません。
外宮の多賀宮も同様にパワースポットと言われていますので、これはつまり「行動的=パワー」と位置付けられる所以でしょう。
ただ、幾度も言うように伊勢神宮全体が既に強力なパワーを帯びていますので、荒祭宮や多賀宮だけを特定してパワーが発せられているということはないと言えるでしょう。
内宮宮域の大自然の息吹を感じることができる
広大な内宮宮域にて、ちょうどこの荒祭宮の辺りでのみ、うぐいすの初音(春の到来)が聞ける。まさにパワースポット呼ばれる所以が理解できるというもの。
ところで・・荒祭宮では個人的なお願い事をして良いの?
神宮では、荒魂をお祀りしたお社では個人的なお願い事をして良いと言われています。
言い換えると、神様の欲の部分の性格とも受け取ることができるからです。
つまり、上述の「多賀宮」や「荒祭宮」といった「荒魂をお祀りしたお社」で、個人的なお願い事をすると、行動的な神様の「荒ぶったお力(=パワー)」で、あなたの願い事を後押ししてくださるそうです。
小さくても良いので声に出して、ソっとお願い事を言ってみましょう。
後は、あなたの行い次第ですね。
荒祭宮でお願い事をしても良い理由
実は現代においても荒魂を祀った社でお願い事をしても良い理由は明らかにされていないようですが、一説では参拝者のための計らいであると考えられています。
参拝者も人間です。日本の神宮でお願い事ができないのであれば、はたして参拝する人はいるでしょうか?
荒魂は神様の行動的な性格、つまりパワーをもった魂であると解釈することができ、パワーに押されて願い事が叶いやすいと云われています。
この道理を利用した神職の方々や御師(おし)、もしくはその関係者が、式年遷宮が永続できるように資金を得る目的で話を広めたとも考えられます。
そもそも伊勢神宮でお願い事ができない理由とは?
神宮で個人的なお願いができない理由は、元来、伊勢神宮には「私幣禁断(しへいきんだん)」という制度があるためです。
伊勢神宮は元来、国民全体の平和や国内の繁栄を願うために天皇が下向して祈るといった別格の神社です。
すなわち、天皇以外の奉納(お供え物)や願い事が禁止とされるのはこのためです。
ちなみに「私幣禁断」の「幣」は、「幣(ぬさ)」とも読み、当時の価値では物として「紙、麻、木綿」の事を指しました。現在風に例えれば「紙幣(お札=賽銭)」のことを指します。
よって「私幣禁断」とは、「幣」に「私」を合わせて「個人の奉納は禁止とします」と解釈されます。
⬆️荒祭宮の賽銭箱。これは荒祭宮だけではなく伊勢神宮の社殿全般に言えることだが「鈴」がない。
荒祭宮の石段にある「踏まぬ石」?
他にも、荒祭宮にはちょっとした秘密があります。
まず、荒祭宮へ参殿するまでには、長い長~ぃ道のりを歩むことになりますが、その途中にある約60段もの石階段にその秘密があるというのです。
その秘密と言うのが「踏まぬ石」という「割れた石」です。
石段を荒祭宮を背にした方向で数えて15段から16段目くらいに「天」という漢字の形状に割れた石があって、この石を踏んしまうと「悪いことが起こる」と云われています。
他にも、「天から降ってきた石」だとも云われているそうですが、神社へ行くと何かとそんな謎や都市伝説じみた話は付き物です。
したがって、信じる信じないは、あなた次第です。
ただ、もし重要な何かを秘めた石であれば、神宮が放置はしておかないでしょう。
しかし、施工(工事)の段階でなぜ、このような石が設置されたのか?・・については、知りたいところではあります。
踏まぬ石は江戸時代にもあった?!
この踏まぬ石の話は、江戸時代の書物にも記録されており、その中の一節に「1781年から1789年(天明年間)頃、荒祭宮に石段が設置された」などの記述がみられます。
もし、現今に至るまで補修も簡易的に行われるのみで、石の入れ替えが行われていないのであれば、この当時から踏まぬ石が存在していた可能性が極めて高いということです。
まぁ、階段も年が経てばスリ減りますし、割れもするでしょう。
ただ、確かなことが判然としていないので「悪いことが起こる」というのは単なる噂だと言い切れるものでもないと思います。
石の形状から見ても、思わず避けて通りたくなるのは確かです。
その時に足を踏み外して、妙な角度で階段を踏みしめてしまい、足をヒネって捻挫したと言うことにならないように注意だけはしておいてください。
ひょっとすると数々の噂も、このようなことが原因となっていることも考えられます。
万が一、踏まぬ石を踏んでしまったら・・キャ~
万が一、踏まぬ石を踏んでしまったらどうなるのでしょう?
実は、踏まぬ石のことを知らない方が多いので、参拝される方は毎日、普通にパゴパゴ踏んでいます。
もし、祟りのようなものをもらうのであれば毎日、何人かは祟りをもらっていることでしょう。
そうなれば、ニュースに出るくらいの事件が発生してもおかしくはないということですが、ニュースではそれほど騒がれていません。
あくまでもジンクスのようなものだと考えて、ご神前で真摯に祈りを捧げれば「何事もナシ!」と言えます。
仮に踏んでしまって悪いことが起こっても、それはきっと別の要因が影響していると考えられます。
まず、大事なことは「神様に対して真摯に祈りを捧げる」そして「日々の行いをあらためる」ことでしょう。
荒祭宮の石段に真ん中に生えている摩訶不思議な「杉の木」
荒祭宮へ訪れた方なら分かりますが、荒祭宮の殿舎を向かい見て左側の敷地の手前にある石階段の中央には、ひときわ大きな木が生えています。
杉の木の具体的な場所
荒祭宮の杉の木は殿舎と隣の空き地(古殿地/こでんち)を正面から見て左側の石階段の中央に生えています。
2013年度の遷宮では、右側の敷地に殿舎が新造されて御神体が左側に建っていた旧・殿舎から移されたので、2013年以降、次の遷宮までは左側は空き地になります。(↓写真参照)
この大きな木は「杉の木」であり、なんでもキゃナリ(訳=かなり)、古い歴史を持った杉の木だそうです。
1781年から1789年(天明年間)頃、実はこの荒祭宮に現在の石段が設置されており、この時にはすでに存在が確認されていることから、歴史で言うともっとそれ以前からこの場所に存在していることになります。
神宮では境内の木々にオノを入れることを禁じられているため、伐採されることなく現今までスクスクと成長してきた杉になります。
もし、これが事実だとするのであれば230年以上もこの場所で生きていることになります。
ちなみに神宮の神域に群生する杉の木々は、敬いの意を込めて敬称で「神宮杉」と呼称されることがあります。
えぇっ?!荒祭宮には鳥居がない?!
なお、ここ「内宮・荒祭宮」と「外宮・多賀宮」本殿の前には鳥居がありません。
これは「伊勢神宮の七不思議」とも呼ばれているようなのですが、そう言えば荒魂を祀った神社には鳥居が少ない気がします・・。
鳥居がない理由として、一説では御社殿こそは離れていますが、異空間において御正宮と繋がっているからだとも云われます。
その他の説では御正宮の和御魂と多賀宮の荒御魂がつながっているためとも云われます。
足腰の弱い方は「荒祭宮・遥拝所」でお参りを!
荒祭宮までの道のりは長く、途中に60段にも及ぶ石の階段があります。
階段は下り方向ですが、足腰が弱い方や階段を昇降する自信の無い方は無理をせず、「荒祭宮専用の遥拝所」が設けられておりますので、そちらでお参りしてください。
また、連休(GW、年末年始など)は混雑のあまり、荒祭宮の手前の階段に長蛇の列が発生することがあります。
くれぐれも神様の御前であるということをわきまえ、心優しい寛大な気持ちでお並びください。
荒祭宮・遥拝所の場所(地図)
荒祭宮・遥拝所は、御稲御倉の右脇にあります。
荒祭宮の場所(地図)
荒祭宮は神楽殿を通り過ぎて、五丈殿を左へ進み直進したところにあります。
伊勢神宮・内宮(境内)のおすすめの参拝ルート
※注釈※
御正宮を参拝した後に荒祭宮(別宮)を参拝するのが良いとされ、暗黙の参拝ルールとされているようです。(絶対ではありません)
なんでも正宮をお参りした後で別宮の荒御魂にお参りすることで御祭神からいただけるパワーを増幅させることができるとのことです。